藍九谷捻花松桜文瓢徳利
$5,701.00
茶事懐石の酒器のなかで声価の高い古九谷の瓢徳利。中国明時代の景徳鎮窯で注文生産された祥瑞の瓢徳利に因んで、有田地方で生産されたものです。
国産の高級酒器としての役割を担った瓢徳利。
古九谷様式のなかに類品がしばしば見られますが、成形や絵付の丁寧さ、瀟洒で品格のある文様構成、磁器そのものの品質などの点で上手で格別なものが多く、バラエティに富んだ意匠であることからも、江戸の茶人たちを満足させる特別な品だったことが窺えます。
こうした古九谷の瓢徳利は、中国産の祥瑞の徳利と並行して寛文・元禄頃から茶事懐石の中で用いられていたそうです。
本作は、瓢形の膨らみに合わせ、更に土を盛り上げて捻花形としたつくり。瓢形に捻花形が重なり、画一的でないリズムを与えています。成形だけでも非常に凝った作りであることがわかりますね。
膨らみに合わせて籠目文様と松の図案を交互に配した文様構成も大胆です。籠目文様の部分は、薄瑠璃を塗り込めた上に濃色の染付で籠目を描き込んでいます。
松の部分は白磁の余白を生かしており、配色のコントラストが印象的です。
この視覚効果が成立するのも、白磁の色が冴えているからこそ。胎土も良質であることが特別な品である証です。
そしてよく観察してみると松の中には桜の花も描き込まれており、とても華やかな趣があります。とはいえ桜を全面に出していないのは、季節を問わずに使えるようにという計らいでしょうか…?
その答えは知る由もありませんが、さりげない桜の花が茶席での話の種になる、という場面も想像でき、なんとも気が利いていて感心させられます。
染付の落ち着いた深みのある色合いや、凛としながらも温かみのある佇まいは国産磁器ならではなのではないでしょうか。
大きさも酒器として理想的。酒を入れた時の重さも考慮された手頃な重量です。