猿投灰釉壷
¥160,000
- 地域/時代 平安時代中期
- サイズ H18.4×W19.5×D19.5㎝
- 状態 口に大きな欠け(写真の通り)
- 付属品 桐箱
- 品番 43nk-72
名古屋市東方の丘陵地帯に点在した古代日本屈指の陶磁器生産地である猿投窯。
きめ細やかで灰白色に焼き締まるこの地に特有の陶土によるやきものには、骨董の世界でも多くのファンがいます。
本作は猿投窯の灰釉壺。どこか凛とした緊張感が漂うのは、肩部のラインゆえでしょうか。僅かな膨らみを持ちながらも、高台から肩部、肩部から頸部へと鋭利な角度でつながります。広い口縁部がラッパ状に広がる、広口壺とも呼ばれる器形です。
飛鳥時代から平安時代頃の猿投窯で志向されたのは、金属器のような造形性と大陸陶器への憧憬でした。薄い器壁や滑らかな肌、縁や肩部の鋭い造形感覚からは、そのような古代人の意識が手に取るように伝わってきます。
全体に灰白色を呈した肌に、ところどころ淡緑色の灰釉が流れています。肩部の平たくなっている部分には、釉薬が溜まってガラス状に固まり、瑞々しい印象です。
口縁部は写真の通り大きく欠けています。これもよい塩梅ですね。不思議なことに、猿投の場合この欠けも猿投の造形性をより演出してくれる美点として受け入れられます。
“完品かどうか”よりも“欠け方が好ましいかどうか”が選択の分岐点とも言えるかもしれません。
花器として使用することを考えてみると、崩した花も受け入れてくれ、むしろ完器では得られないような面白みがあります。角度によって変わる見え方をどう決めるか、欠けから覗く足元の花をどう見せるか…。方々にイメージが湧きます。
お水は直接入れても問題ありません。時間が経つとじんわりと湿度を帯びる感覚はありますが、漏れなどはないのでご安心ください。
猿投はこれまで何度も扱ってきましたが、そのたびに魅了される不思議さがあります。織部や志野、瀬戸といった後年のやきもの、あるいは他地域の国産陶器にはない俗気の薄さといいますか…。
朽ちた姿のなかにも、宗教儀礼や貴族のための限られた実用品だったこそ纏う、清らかな気配があるようです。
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