古信楽壺
静かでありながら変化に富む表情の壺です。
雨上がりの山野のように、艶やかな赤茶色の土味を呈した面に対して、反対側は窯の中のフリモノが無骨な景色を生み出しています。
高さは35㎝余り。存在感のある大きさで、ふっくらと丸い形と窄まった口とのバランスも非常に均整が取れています。
信楽焼は、滋賀県甲賀市信楽を中心に作られた中世から現代まで続く六古窯のひとつ。そのなかでも、室町時代に焼かれた壺は、数奇者ならば誰しも憧れる品です。
魅力はなんと言っても、野山の情景を壺にしたような姿。掘り出したままの山土に釉薬を施さずに焼成したことによって自然景をそのまま写したかのような、人工的には生み出すことのできない風情を生み出しています。
美しいと感じる自然景がひとつでないように、信楽壺の魅力にも決まった答えはありません。ひとつとして同じものがないからこそ、人の心を惹きつけてやまないのでしょう。
状態も非常に良く、口縁に経年による小さい欠けはあるものの古信楽のコンディションとしてマイナスとなるものではありません。
花活けとして、玄関の広々としたスペースや床の間に飾れば、空間に古の風格をもたらしてくれます。