須恵器広口壺
¥198,000
数千の古物が雑多に並べられた仕入れの会場で目に飛び込んできた壺。
華やかな絵付があるわけでも、煌びやかに輝いているわけでもありませんが、緊張感のあるフォルムが周囲のものとは異なるオーラを放っていました。
須恵器の広口壺。
底部から腰にかけて大きく広がり、くの字型を描いてすぼまった形。
そして水盤のように大きく広がった口。
シャープなフォルムもさることながら、僅かな立ち上がりが繊細に作られた口作りにも目を見張ります。
胴部には焼成中のアクシデントひっつきがあります。
ちょうど胴部に付着した三日月のように鋭い陶片。おそらく同じような器形のものが何かの拍子に倒れ、くっついてしまったのでしょう。
自然釉の深い緑色も艶やかです。
金属器の形を陶器で模したことから始まる須恵器は、金属器の緊張感とやきものの即興性を併せ持った魅力があります。
格式ばらない身近な存在でありながら、同時に空間に程よい緊張感を生む花器ではないでしょうか。