古九谷吸坂手銹釉染付蕨文稜花皿
¥650,000
全体に鉄釉を施した中に、一部のみを掛け残し、白磁や染付で文様を表す「吸坂手」。
染付と比べて圧倒的に数が少なく、非常に希少でありながら、粋な意匠のものが多く、高い人気があります。
本作も吸坂手に属する作品のひとつです。
まず目を引くには、艶やかな銹釉に白磁と染付で表現された蕨の文様。
青と白のグラデーションの配色も美しく、リズム感を感じさせます。
日本原産の蕨は、日本人にとって馴染み深い植物。
芽吹いたばかりで先の丸まった姿は「早蕨」と呼ばれ、春を告げる季語として万葉集にも登場します。
本作が作られた江戸時代には、琳派の作家たちによって絵画や工芸品の意匠にも、多く用いられてきました。
琳派が生み出した瀟洒なデザインは、当時から非常に人気が高かったそうなので、本作のような肥前磁器にも少なからずその影響があったことを想起させます。
本作と類似するタイプの吸坂手の作品は、1650-1660年台頃に製作されたと考えられており、分類としては古九谷とされていますが、精巧な作りと雅味溢れる意匠性から、研究によっては鍋島に先行する”松ヶ谷”とされる場合もあります。
稜花型の型取りはシャープで薄く、裏を返すと蛇目状の高台の周りに三足の脚が付けた丁寧な作ゆきです。
[追記]
コンディションについて、写真を追加します。
縁の部分に1㎜程度の極小のホツが3箇所ございます。
写真はルーペで拡大して撮影したもので、肉眼では確認が難しいほど小さい直しです。