古唐津銘々皿 五枚組
非常にコンディションが良く、古唐津の魅力を味わうことができる銘々皿を仕入れることができました。
古い時代に誂えられたのだろうと思われる箱には、「古唐津向付」の墨書きが。大切に受け継がれてきたことが窺われます。
本作のような無地唐津の皿は、当時貴重であったとはいえ日用の器として活躍したものです。また発掘品も多いことから割れや傷は当たり前。市場でも端皿(複数枚のセットから1枚ずつに分かれたもの)を見かけることはありますが、組皿として調和しつつ、状態の思わしい5枚を見つけるのは案外簡単ではありません。
このような古い時代から伝わったことがわかる仕立ての五枚組を見つけられたことに喜びを感じました。
古い時代、あるいは製造時からと思われる角が取れたホツは所々に見られるものの、いわゆる直しがあるのは1枚のみ。縁に2㎝程度の割れを漆で繕っています。悪目立ちしないように配慮された落ち着いた漆直しが好ましい印象です。
それぞれの中央には朝鮮半島由来の技術、砂目積みの跡が見られます。こちらも円やかに角が取れ、嫌な引っかかりはありません。5枚全てが艶やかな釉薬の光沢を残しており、その中に石ハゼや鉄班なども所々に見られ、古唐津ならではの野趣あふれる景色を堪能することができます。
裏側は高台を残して施釉されています。ざんぐりとした土味、釉薬の流れも荒々しく魅力的です。
本作のような目跡のある皿類は16世紀の末から17世紀初頭に生産されたとされています。本作の制作年代も同じく、桃山時代の最末期から江戸時代の初頭にあたるものと考えられます。
直径13㎝強の大きさは、銘々皿として膳に乗せるにもちょうど良く、また菓子を取り分けるにも良い大きさ。
シンプルに調理された山菜や青菜を盛り付ければ、じんわりとした滋味深さを演出してくれます。あるいは新鮮なお造りを少量頂くにも。
様々な場面が想像できる器です。