初期伊万里輪線茶入
すっきりとした意匠の初期伊万里の茶入。
肩部には細い輪線、そして口縁部には太い輪線が引かれています。
シンプルな意匠ですが、染付の僅かな滲みや温かみのある釉膚が初期伊万里ならでは。
盛期伊万里、あるいは現代陶器にはない魅力です。
高台部分は施釉されておらず、素地が露出したベタ底になっています。
初期伊万里には、水差や茶碗、掛け花など、茶湯に関するものが多くありますが、元々茶器として造られたものはごく僅か。一方で、茶器として用いるのにちょうど良い大きさの小壺は、象牙や木製の蓋を伴って見立ての茶器として伝わっています。
本作もまた元々は別の用途だったものが、数寄者によって茶器に見立てられたものでしょう。柿材のような黒っぽい茶色の蓋が誂えられています。白磁によく合う洒落た蓋です。
お気に入りの茶碗と合わせて盆に仕込んでおけば、自宅のテーブルでもさっと取り出して盆点前のお茶を楽しめます。小ぶりなサイズはお盆に仕込むにも収まりが良く、重宝しそうです。
今の時期なら冷茶にもいいですね。もちろん季節は問いませんが、土物や塗物の茶入れとは一味異なる清々しい染付磁器。この時期ならではのガラスの茶碗にも相性抜群です。
初期伊万里の中でも元から茶入として造られたものは肩衝形など唐物由来の形をしているのに対して、本作は小壺の形をしています。
本来は濃茶器とされる陶磁器の茶入ですが、見立ての茶器なら形による用途の制約もありません。ルールに縛られず、自由な発想で道具組みに取り入れてみてはいかがでしょうか。
傷等はなく、コンディションは極めて良好です。