李朝粉引茶碗
釉下に高台の内側に至るまで器全体に白化粧を施し、そこに透明釉をかけて焼きあげた粉引。
白磁が主流となる前の李朝初期、ほんの僅かな期間に作られた粉引は、日本の茶人の間で流行し今日に至るまでその評価は継承されてきました。
その魅力は名前の通り、釉下の厚い白化粧が生じさせる粉を吹いたかのような独特な肌合い。
この肌合いと白化粧の美しさが粉引の生命ともいえます。
本作は明るい色の白化粧が全体に施された茶碗。
小さく締まった高台と端反りの形が相まって、端正な印象を受けます。
見込みを覗くと、使用によってできた色の変化や斑が良い表情を作っています。
粉引特有の、焼成中にガスの通り道となって生じる小さな黒い穴(ピンホール)も所々に現れ、端正な中にも変化に富んでいます。
白化粧の上からかけられた透明釉が淡い緑色を呈しており、それもまた茶碗に重層的な視覚効果を与えています。
仕覆はインドネシアのイカット。
まだ水を通していないためか、赤色が目に鮮やかです。