ガンダーラ獅子像
- 地域/時代 ガンダーラ 3–5世紀頃
- サイズ H18.3㎝×W10.4㎝×D7.8㎝
- 状態 良好
- 付属品 桐箱
- 品番 43nk-036
西アジアとインド、中央アジアを結ぶ東西の中継地、ガンダーラ。現在のパキスタン北西部に位置するこの場所で、2世紀ごろに初めて石彫による仏像が造られました。
東西交渉路の要衝だったこの地で発展した仏教彫刻には、ギリシャ、ローマ、そして西アジアなど様々な地域の要素が混合しています。
ライオン(獅子)の意匠もそのひとつ。西アジアでは力と太陽の象徴と考えられた獅子は、ガンダーラでは仏教と結びつき、仏を守る守護獣として表されるようになります。
さて、本作はガンダーラの獅子像です。舌を出して右上を見ながら体を捻っているようなポーズ。本来の猛々しいライオンの姿とは少し違って見えます。
獅子とはいっても牙は見えず、丸い耳に垂れた目、甘えるような表情はまるで仔犬のよう。ふさふさとカールした豊かなたてがみが唯一ライオンらしいポイントでしょうか。ライオンを本物の姿に近づけて表現した西アジアに対し、写実とは異なる方法で表現したこともガンダーラの獅子像の特徴です。
この舌を出したポーズ、意外にも相手を威嚇する際のポーズという説もありますが……どうでしょうか…?舌を出す獅子像にもいくつかのパターンがありますが、本像について言えば威嚇というよりも、信頼、思慕を思わせる姿に思えてなりません。
〈仏陀坐像〉ガンダーラ, クシャン朝3‐4世紀
(出典:平山郁夫シルクロード美術館 https://silkroad-museum-collection.jp/仏陀坐像/)
上の写真は、日本国内のガンダーラ仏の中でも秀でた美仏として知られる仏陀坐像(平山郁夫シルクロード美術館蔵)です。
尊像の両脇に目を向けると、本像と非常に良く似た獅子が配されています。ポーズをはじめ、台座の襞の一部と思われる左側の斜めの柱のようなパーツも一致します。このような獅子座の形式は、ガンダーラで典型的な図像。百獣の王さえも平伏す存在として仏の威光を示す形式は、中国石仏などでも多く見ることができます。
本像もまた元々はこのような像の一部だったものでしょう。獅子の仰ぎ見る先にはどんな美仏がおられたのでしょう…?
洋の東西を繋ぐ普遍性、そして東アジアの獅子像の祖型でもあるというダイナミックな歴史、、あちらこちらに好奇心を掻き立てられますが、それはさておき見ているとついつい頬が緩んでしまうような愛らしさが何よりもの魅力です。
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