コプト裂 天使像
₩2,830,000
天使が織り込まれた美しいコプト裂。
その寸法から、チュニックの肩周りの装飾と思われます。
コプト裂とは、エジプトに住むコプト人が創始、発達させた織物。
コプト裂の年代は前期(3世紀から5世紀半ば)、中期(5-8世紀)、後期(8-12世紀)の3つに区分することができ、中期にあたる5-8世紀が最盛期と言われています。
本作では、色鮮やかな朱地に天使が表され、左右は連続する幾何学文で囲われています。
中心に在するその者は、光輪、翼、右手の槍、正面の盾などの特徴から大天使ミカエルと推測できます。
コプト裂の魅力はなんといっても図柄の素朴なフォルムにあるのではないでしょうか。
中期に表される文様は、写実から離れ、様式化が進み、カリカチュア風な人物や動植物が多く描かれるようになります。
本作において表される天使も、荘厳な雰囲気の中にどこか親近感をもたせる魅力ある佇まい。
あたたかで自由なその表現は、現代に生きるわれわれの心にも響きます。
前期は薄茶地に黒で文様を織ったものが多いのですが、この裂の織られたであろう中期になると、派手やかな色彩が入ったものが多く織られます。
この裂においても、背景の朱、周囲の幾何学文様、天使の衣服、どこも中期の魅力が存分につまっており、見ていて飽きません。
ニューヨークのメトロポリタン美術館が同一の柄の裂を所蔵しています。この類品から、天使の文様の上下には狩猟文が織られていたことがわかります。
メトロポリタン美術館所蔵裂 全体/天使文部分拡大図
(出典:https://www.metmuseum.org/art/collection/search/474229メトロポリタン美術館)
また、三越西洋美術サロンの証書が付属しています。
この証書では、戦士文、そして時代は、4-5世紀となっていますが、今回調べた結果、描かれているのは天使、そして文様と色彩等の特長から6-8世紀と判断しました。
詳しくは下記のブログをご覧ください。
裂の色彩を引き立たせるために背景には黒い和紙を合わせ、飾って楽しめるよう額装してあります。
額を開けてお好きな背景に変えていただくことも可能です。
発掘品なので多少のホツレや汚れはしょうがないもの。
裏側から少し補強されていますが、表面からは全く見えません。
メトロポリタン美術館所蔵の裂と比べると、今回の裂が良好なコンディションであることがよくわかります。
縦14cm、横10cmのこの小さく美しい古裂から、ビザンツの風を感じていただけるかと思います。