富本憲吉 染付柿釉梅文煎茶碗 五客組
₩2,830,000
近代日本を代表する陶芸家、富本憲吉(1886-1963)。
前近代の職人としての陶工から、芸術家としての陶芸家の地位を確立した人物のひとりです。
富本の作品といえば、独創的な図案と達者な絵付が最大の魅力。
「模様から模様をつくるべからず」という名言はよく知られていますが、形骸化したパターンではなく、自然物の写生に基づいて真に創造的な図案を生み出すことに心血を注ぎました。
近代という時代精神、そして作家個人の独創性から生まれた富本の作品は、過去のどの時代のものにも探し当てることのできない真のオリジナリティから生まれたものです。
本作は、富本が東京・千歳船橋で作陶していた時期に製作された煎茶碗。
余白を多く残し、側面の染付による梅模様と、高台の周りの帯状の柿釉が潔くすっきりとしたデザインです。
高台内には「富」字の銘。
蓋裏には「紀元二千六百年秋」と書かれています。
昭和15年(1940)は、日本書紀に記された初代・神武天皇の御即位から2600年にあたる年として日本中がお祝いムードに包まれたのだそうです。
この記念すべき年に造られた作品であることが富本自身の手によってはっきりと書かれています。
使用していたためか蓋面の箱書きは薄れてしまっています。
ぜひ春を寿ぐ器として生活に取り入れていただきたい品です。