藍九谷鶴形向付 五客組
₩3,555,000
初期の伊万里焼のなかでも17世紀中頃から造られた「変形皿」と呼ばれるうつわ。
本作は、変形皿の人気の高まりと共に、より優美で高級感のある表現が可能となった1660年代から1680年代の作品です。
その名の通り、変形皿とは一般的な円形皿とは異なり皿自体を様々な形にした皿です。
菱形や色紙形といったシンプルなものから、花鳥風月を題材とした複雑で精巧なものまで幅広い意匠が取り入れられました。その多くは、17世紀後半の衣裳図案帖の雛形から引用されたもの。最先端の流行を捉えたデザイン性の高さから、瞬く間に人気を博し、高級食器として受け入れられました。
現代の目で見ても、そのデザインは雅で瀟洒。江戸時代から現代まで連なる日本人の自然観や美意識を、日本独特の芸術形式である「うつわ」の中に感じることができます。
大きな翼を広げようとする瞬間の鶴の姿を落とし込んだ本作。長い首を大きくうねらせ、意匠化されたなかに躍動感を感じさせます。
表面は羽の一枚一枚を凹凸を用いて表し、そこに染付のぼかしを重ね合わせ、豊かな羽毛を表現しています。この形は非常に人気があり継続的に造られましたが、こうした細部まで行き届いたこだわりは後年作にはありません。
いっそう繊細な印象を受けるのは、首と翼の透かしの部分。反り返る首に合わせて円形の透かし、また羽先と尾を棒状のパーツで繋げています。
同形の皿には、この透かしがないものも多くあります。当然ながら、透かしのあるものの方が、より丁寧に作られた作。絵付も上手のものが多い傾向です。
縁には鉄釉の口紅が巡らされ、分銅形の高台内には「宣明(徳)年製」と描かれています。
五客それぞれの縁に小さなホツが所々に見られるのみで、全体的に良好なコンディションです。
明時代末期に日本からの注文で輸入された古染付、さらには桃山時代の織部焼の変形皿を原型としながら、そこに日本近世ならではの感性が加わって発展した古伊万里変形皿。
漆塗りの膳や、根来のような時代のある侘びた膳に合わせれば、凛とした日本の磁器ならではの魅力が引き立ちます。