李朝飴釉面取瓶
「飴釉」と呼ばれる琥珀色の釉薬をかけた面取作品の魅力は、素地の凹凸と釉薬が生み出すグラデーションであることは誰もが認めるところでしょう。
言葉にしてしまえばそれだけなのですが、面取りの鋭さ、施釉のムラ、そして焼成の具合によって与える印象は十人十色。
言語化できない領域に個々の面白さがあります。
このタイプの面取瓶は、元は日用の雑器として作られたもの。
数は多く、典型的な器種ですが、その分並みのものより魅力が求められます。
本作の魅力は、素地の削り出しの荒々しさ。
勢いの感じられる削り出しからは、熟練の陶工による大胆な手捌きが目に見えるようです。
更に僅かに透明度のある飴色の釉薬が、陶工のダイナミックな動きをグラデーションによってそのまま視覚化しています。
均質ではない線や面の凹凸によって与える印象は複雑です。
よくよく観察してみれば、釉薬にも所々に鉄斑が表れるなど様々な表情があり、飽きることがありません。
コンディションが非常に良いのも嬉しいところ。
このタイプの作品は、傷やダメージのあるものがほとんどですが本作は奇跡的に無傷です。
無邪気さのなせる線と面の妙。
朝鮮陶器の本領といえる作品です。