李朝花三島金海銘鉢
線条文で帯状に区分けした内側を、様々な文様で飾っています。縁は円弧文、最も広い部分は印花による花模様、鋸歯文、そして中央には余白を生かした草花文と銘が刻まれています。
とても丁寧な装飾で、印花は整然と並び、素地とのコントラストも明快です。
銘の周辺にある草花文が三島の印花としては比較的珍しく、新羅時代の土器に見られるような文様とも類似しているのがユニークな点です。余白を生かした部分と、びっしりと装飾された部分とのメリハリが効いており、好ましい印象です。
中央の銘は一字目がはっきりと判別できませんが、おそらく「金海」ではないかと思われます。
日本では「三島暦手」と呼ばれてきた15世紀の粉青沙器の中には、製造された地方銘や焼き物を管理した官庁銘が刻まれたものがしばしば見られます。釜山にほど近く粉青沙器を多く作った「金海」の地名は、代表的な銘のひとつです。
銘が入っているという希少性だけでなく、装飾の精度が高く、出来栄えがよいというのが魅力の本作。このタイプの鉢には傷や直しがつきものですが、本作は薄めのニュウが2本見られるのみで良好なコンディションです。
歴史的な面でも一言では語り尽くせませんが、「使う」という面でも李朝陶器は非常に堅牢性が高く、たくさんの場面で活躍してくれます。
直径は20㎝強。適度な深さも取り回しがよさそうです。