弥生土器壺
愛知県を縦断するように流れ三河湾へと注ぐ矢作川。
流域には集落遺跡や寺院跡が点在していたそうで、その存在を知らせるかのように縄文早期から近世に至るまでの祭祀道具や土器、緑釉陶器、陶硯など、数多くの遺物が発見されています。
考古学的な重要性、そして川が自然のタイムカプセルとなって古代遺物が発見されたというロマン溢れるストーリーから、矢作川河底遺跡から発掘されたものはいつしか「矢作川上がり」などと呼ばれて特別視されるようになりました。
本作もまた、矢作川上がりと伝わる弥生土器。
奇跡的に傷や欠けなく完器の状態。
矢作川上がりの遺物にはしばしば完全な状態のものがあるそうです。
長年水中であらわれたことによって、角が取れまろやかな質感となっているのも川上がりならではの魅力です。
灰色から白、橙色と、変化に富んだ土の色は自然風景のようなグラデーション。
ころんと丸いフォルムが愛らしく、胴を囲うオレンジ色の一筋の線もまたポイントとなっています。
花映えする一品ですので、ぜひ身近な花を生けて楽しんでいただきたいです。