高麗青磁蓮華文筒茶碗
側面に蓮弁文が彫り込まれた筒形の碗は、茶器に用いられたものとして、しばしば見受けられます。
この碗を最初に見たとき、良く見る蓮弁文の筒碗と何かが違う…と感じながらも、その印象の違いがどこから来るのか暫くわかりませんでした。
みなさんはその違いにお気づきでしょうか?
本作がユニークな点は、蓮弁文を施す前の段階で、素地に面取りが施されていること。
非常に緩やかな面取ですが、これがない状態を想像してみればその効果は明白。面が取られることによって形に無骨さが生じ、物質的な存在感を作り出しています。
側面には線刻で蓮弁文、口縁には象嵌で幾何学文が入っています。
その上から高麗青磁特有の透明度の高い青磁釉がかかると、意匠を加えた部分がホログラムのように浮かび上がります。
こうした筒碗は造られた当時から茶器として用いられたようですが、日本の茶人にも古来親しまれてきました。
貴族的で緊張感のある造形性が特徴の高麗青磁。教科書的な見方をすれば、この碗の素朴さには意表を突かれるかもしれません。
蓮弁文ひとつを例に取ってみても、幅や形もまちまちで厳密性とはほど遠く、後世に李朝陶器を生み出した朝鮮半島の人々ならではの造形感覚を垣間見るようで微笑ましく感じられないでしょうか。
こうした肩の力が抜けた自由さが味わい深さとなり、茶を楽しむにも愛着が湧く道具となっているように思われます。
仕覆はインドネシア更紗。
蓮弁文とリンクする両鋸歯文と、深い赤茶色が品格を添える仕立てです。