阿蘭陀花鳥文茶碗
真っ白な素地に藍で花鳥文が描かれた、阿蘭陀の大ぶりの茶碗。
17世紀らしい柔らかな肌と、たっぷりとしたサイズ感がとても魅力的です。
ここに描かれる花鳥文は、おそらく中国からはるばる伝わった明末の磁器を手本としたものでしょう。
胴には二羽の鳥と花々が描かれています。鳥の描き方、藍の濃淡で表現した花々は即興的ですが愛嬌があり、味わい深さがあります。
対して見込みに描かれる花は、ヨーロッパらしいもので、花鳥との違いがおもしろく、見入ってしまいます。
ご存知の通り「阿蘭陀」と呼ばれるやきものは、オランダで焼かれたものだけを指してはいません。
南蛮貿易では、オランダ、ポルトガル、スペイン、イギリス等で焼かれたものが、ヨーロッパの商人たちによって日本に持ち渡られました。
鎖国後はオランダだけが貿易を許されていたので、総称として「阿蘭陀」という名が残ったのです。
当時、大名や茶人らはこの異国情緒あふれる焼きものに夢中になり、こぞって注文をしたという記録が残っています。
全体に金直しがあります。
余程大事にされてきたのでしょう。細かいパーツまで拾い集められ、直されています。
旧蔵者のこの茶碗への深い愛情が伝わってきます。
古い箱が付属しており、「おらんだ 鉢」と書かれています。
仕覆は、同じくヨーロッパ生まれのシノワズリの更紗で仕立てました。
阿蘭陀の茶碗とシノワズリ更紗の仕覆。
これ以上ない程、洒落た組み合わせではないでしょうか。
中込みも、仕覆の裏地と紐の色と統一しています。
異国情緒溢れる茶碗は、お茶会でも人目を引くことでしょう。